2020年 養液栽培や植物工場の普及率に関する最新データ②

養液栽培・植物工場の普及率&市場シェアは?

前回の 記事 では、施設園芸の栽培面積や品目について解説しましたが、今回は、調査レポート の中にある「養液・水耕栽培」と「太陽光利用型の植物工場」に関する市場動向を紹介します。

 

養液栽培とは?水耕栽培と同じ意味なのか?

一般的には「養液栽培」と「水耕栽培」は同じ意味にて使用されていることが多いようですが、専門的に言えば、養液栽培は大きな上位カテゴリーであり、その一部のサブカテゴリ―として「水耕栽培、噴霧栽培、固形培地栽培」がある、とされています。

なお、固形培地栽培は、無機・有機に関わらず培地の上から潅水チューブ等で養液を供給する方式として「養液土耕栽培」とも呼ばれることがあります。

特に「養液土耕栽培」は食味アップのために、イチゴでは多くの施設が採用している栽培方式の一つです。こうした栽培方法は、全て上位カテゴリーの「養液栽培」としてカウントされているため、イチゴの養液栽培面積は大きな数値結果となっています。

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イチゴの養液土耕栽培の様子。培地は各生産者にて使用しているものが異なる。培地中にセンサーを導入し、潅水チューブから養液量や供給のタイミング等を自動制御することもできる。イチゴの場合、作業性を考え、高設栽培を採用する生産者も多い。

 

植物工場とは?その定義は?

施設園芸をハイテク化し、屋外・栽培室内にて複数項目をモニタリング&設定値に合わせて自動制御することができる=複合(高度)環境制御システムを導入している施設を「植物工場」と分類しました。農水省、一社)施設園芸協会も、同じような定義にて調査を行っております。

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養液栽培の普及率は「6.4%」今後も急成長が見込まれる

そもそも、どういった品目で養液栽培が行われているのでしょうか?その回答は「トマト」と「イチゴ」の2品目ですその他の野菜も養液栽培が行われていますが、トマト・イチゴの2品目を合計すると、全体に占める栽培面積シェアは「72%と大部分を占めております。

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養液栽培の普及率(野菜全体)は「6.4%」イチゴでも「約11%」

施設園芸における養液栽培の普及率(野菜全体)は、H30年で「6.4%となっており、施設園芸の面積全体が減少する中で、養液栽培の面積・普及率ともに増加しています。

また、養液土耕栽培が広く普及している「イチゴ」の場合でも、養液栽培の普及率(面積比率)は「約11%」となっており、近年も拡大傾向であるとともに、今後の拡大余地が大いに残っていることが分かります

 

その他の環境制御の普及率は?

施設園芸による野菜の生育において最も重要なのは、根域環境をコントールすること。つまり「養液栽培」等の導入となります。そして、次に栽培室内を最適にするため「加温(暖房)、CO2発生装置、2層カーテン設備、換気扇・循環扇」などの設備導入が必要となります。

こうした全ての設備を導入し、複数の項目をモニタリングしながら自動制御することが「複合(高度)環境制御システム」=植物工場 となります

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加温設備(暖房)の普及率は「4割程度」

施設園芸(野菜)の中で、加温設備(暖房)を導入しているのは全体の 約4割 程度(面積比率)にとどまっており、残りの6割の施設が加温設備すら導入しておらず、非常にシンプルな栽培方法で営農していることになります。

また、その他の環境制御装置に関する普及状況は「CO2発生装置は 約4%」「2層カーテン設備は 約13%」「換気扇・循環扇は 約16%」(H30データ)といった結果になっております。

 

植物工場の普及率は「2.7%」<H30年時点>

H30年時点における植物工場(太陽光利用型)の普及率(面積比率)は「2.7%となっており、近年は資本力のある民間企業(法人企業)が、大規模施設・植物工場を次々に稼働させております。大型施設の建設は、効率よく運営するために、複合(高度)環境制御システムを導入する施設=植物工場の拡大につながります。

 

栽培施設の大規模化が加速。トマトだけでなくイチゴの植物工場も

施設園芸の生産者をみると、0.5ha以上の大規模施設を運営する農家数の割合が、10年前と比較して(H17、H27比較)「5%」も増えており、農産物の販売金額にて売上高5000万円~1億円以上の農家数も着実に増加していることが分かります。

2020年 養液栽培や植物工場の普及率に関する最新データ②

今後も、栽培施設の大規模化が加速し、「養液栽培」「その他の環境制御」だけでなく、複合環境制御を導入した植物工場の面積が増えていくことが予測されます。

現状では、1つの経営体(生産者)が管理する栽培面積は「0.25 ha」(H30,野菜全体が対象)となっており、植物工場を普及させるには、さらなる規模拡大が必要となります。複合環境制御を導入するには、最低でも「0.5 ~ 1 ha」以上の施設が望ましく、植物工場が普及しているオランダでは、最低規模を「2 ~ 3 ha」前後と設定しているからです。

植物工場の普及率が「2.7%」(H30)である日本において、オランダ基準を満たすような大規模施設は「トマト」のみです。H30年のデータでは、植物工場(太陽光利用型)における栽培面積の約80%がトマト栽培に分類されており、現時点では「トマト」がメインとなっておりますが、今後は「イチゴ」などの植物工場も有望テーマの一つになっております。

 

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