植物工場における照明コスト・販売価格 ~LED光源・蛍光灯~

植物工場にて蛍光灯を導入する際の費用(コスト)

植物工場における光源を選定する際、現時点では、性能・コスト面からもLED光源を選ぶべきですが、比較材料として【蛍光灯】に関するコストも記載しておきます。

※ 蛍光灯は多くのメーカーが製造を中止しており、2021年3月末までには全ての蛍光ランプの生産が終了することになります。

① 植物育成用・蛍光灯の本体価格 ~40W・120cm~

植物育成用の蛍光灯を購入する場合、その本体価格は各メーカーや波長域、光量によって異なりますが、代表的な製品である「東芝ライテックのプラントルクス<1,010ルーメン>」の定価1,320円、100本程度の発注量で【600~700円/1本】前後にて購入することができます。

また、光量が大きい「NECのビオルックスHG<1,920ルーメン>」の場合でも、定価2,400円、同様の発注量で【1,000円/1本】前後にて購入することが可能です。ただし、価格については、インターネットにて「数本~10本単位」で購入する場合は、もう少し高くなります。

家庭などで利用する一般照明向けの蛍光灯は「100~200円/1本」以下で調達することもできますが、植物の光合成に必要とされる光波長が含まれていない商品が多く、植物の生育が極端に悪くなるために候補からは除外しております。

※ 光量を人間の目を基準にしているルーメンルクスといった単位で測定するのは正確ではありませんので、あくまで参考値となります。植物の場合、光強度は「光合成有効光子束密度PPFD」にて計測する必要がありますので、比較・検討する際には注意して下さい。

② 照明器具の導入費用(コスト) ~40W・120cm~

蛍光灯の本体だけでは点灯させることができず、蛍光灯を取り付ける照明器具が必要となります。仮に、複数の蛍光管を取り付けることが可能な「連灯タイプ」であっても、1本の蛍光灯に対して、照明器具の費用は安く見積もっても【500円~1,000円/1本】前後は必要となります。

植物工場の照明における比較・検討ポイント

③ その他の導入費用(コスト) ~40W・120cm~

蛍光灯の本体と取り付け器具だけでは、最低限・点灯できる状態です。光の利用効率を高め、植物に光を均等に照射させるために反射板を取り付けたり、蛍光管が割れるのを防ぐための安全カバー(作業員のケガ対策、野菜への異物混入予防)を導入する場合もあるため、その他の導入費用として【500円~1,000円/1本】前後の追加費用が必要となります。

④ 蛍光灯の交換スケジュールと交換費用

今回、紹介している植物育成用の蛍光灯は、寿命を「1万時間」に設定しています。植物工場の場合、1日16時間の照射サイクルで運営すると、1年で【5,840時間】となり、2年で【11,680時間】となります。

2020年現在においても、昔から稼働させている一部の植物工場では蛍光灯を採用しており、2年を超えた光源は、明らかに新品の蛍光灯より光が弱く、暗い状態となります。

よって、蛍光灯の場合は【 2年弱 】での交換になります。ただし、照明器具は、そのまま利用できるため、蛍光灯本体のみを交換することになります。

結論: 植物工場における蛍光灯の導入費用(コスト)

蛍光灯を導入する際の費用(まとめ)
  • 約120cm、40Wの植物育成用・蛍光灯の場合
  • 蛍光灯: 600円~1,000円前後 / 1本あたり
  • 照明器具: 500円~1,000円前後 / 1本あたり
  • その他(反射板・カバー): 500円~1,000円前後 / 1本あたり
  • 交換費用: 2年間で蛍光灯本体を交換する必要あり

※ 費用は、あくまで参考情報となります。今回の場合、100本以上の大量発注を実施した場合の一般的な導入コストを想定しております。


植物工場にてLEDを導入する際の費用(コスト)

蛍光灯の場合とは異なり、LEDは関連する部品のコストだけでなく、実際に設置・工事するまでの費用を紹介します。

① LED光源の本体価格~約20W・120cm~

植物育成用の場合、日本国内では各メーカーとも「直管・蛍光灯型」「20W」前後の商品を販売していることが多く、その主な理由は以下となります。

  • 人工光型の植物工場では、数年前までは蛍光灯が主流。蛍光灯
     ➡ LEDへの交換がスムーズに実行できるため
  • 人工光型の約90%の施設(日本国内)が「リーフレタス類」を生産。葉野菜は大きな光量を必要としないため

海外では高出力LEDが主流。直管・蛍光灯型の商品が少ない

施設園芸や太陽光利用型・植物工場が盛んな国で、日照時間が少ないエリアでは、(補光を目的に)トマトなどの果菜類を想定したワット数の大きな植物育成用LED商品(200~300W前後)も広く普及しています(写真:philips社)。

また人工光型・植物工場にて葉野菜を生産する場合にも、栽培棚1段の間隔を広く設定し「30~40W」前後のLEDを導入し、直管・蛍光灯型ではなく、パネル型など別のLED商品を採用している施設が多いです。


日本の場合、広く普及している「20W」の直管・蛍光灯型の植物育成用LEDでは、発注本数が少ない場合(100本以下)、ほぼ同じような性能で「6,000円~10,000円/1本」前後にて販売されています。

ワット数や光量など、一般的な性能は同じであっても、費用のバラツキがあるのは「製造場所(国内・海外)、不良品率、生育を高める ”ちょっとした工夫”、どこで利益を確保するか」など、各社の内部事情によって異なります。

例えば、大手LEDメーカーが植物育成用LEDだけを販売する場合、不良品率も少なく安心である一方で、LED商品だけで利益を確保するために、販売単価が若干、高い傾向があります。

年間で数件(日本国内)の大規模施設に納品する場合は、数万本の発注量がありますが、植物工場で必要とされる照明本数は、オフィス・住宅照明と比較すると、圧倒的に市場規模が小さいため、植物工場だけを担当する専属の営業マンを配置することが難しい場合もあります。こうした事情(利益、人件費、管理運営費など)により経費が上乗せされ、販売価格にも大きく影響します。

また、設備プラント全体をセットで販売している植物工場メーカーの場合、全体で利益を確保できるため、LED光源だけをみると、単価が安く設定されている企業も見受けられます

② 照明器具・ソケット&電源コード

LED商品によっては、蛍光灯と同様に、LEDを設置する照明器具が必要な場合もありますが、広く普及している直管・蛍光灯型のLEDの場合、電源内蔵型となっており、LED光源本体に、ソケットと電源コードを取り付けるだけで点灯する場合が多いです。

蛍光灯を取り付ける照明器具が不要ということは、省スペースで光源を取り付けることができるようになり、蛍光灯の場合は「5段」の多段式だったものが、同じ高さでも、直管・蛍光灯型のLEDに変更すると「6段」分のスペースを確保できることもできます。


大型の商業プラントの場合は少し異なりますが、上記の写真のようにLEDにソケットを差し込み、電源コードを家庭用のコンセントに差し込むだけで点灯します。また、(簡易的な)防水を目的として、周辺がゴム素材で、接続部分に水が入らないように、しっかりカバーできる【ソケット】もあります。

植物工場の照明における比較・検討ポイント
大量のLEDを使用する商業用の栽培棚では、LEDを並べながら【連灯タイプ】のソケット・電源コード(以下の写真)を採用する必要があります。
植物工場の照明における比較・検討ポイント

このように、LED照明を点灯させるためには【ソケット・電源コード】が必要となり、LED本体とは別に、費用を請求されることが一般的で、家庭用ACコンセント型~連灯タイプ、ソケット部の防水処理などによって、その費用も異なります。

☆ ソケット・電源コードの一般的な費用

  • 家庭用ACコンセント : 800円~1,000円 前後 / LED1本あたり
  • 連灯タイプ    :500円~1,000円 前後 / LED1本あたり


③ LEDの固定・設置作業

LED光源の設置方法は、各社によって大きく異なります。固定のために専用器具が必要とされ、設置が複雑で電気工事などの資格を持つ専門業者が複数人必要となる場合、大きな費用が別途、請求されることになります

よって「LED光源本体をどのような形で栽培棚に固定するのか(固定の方法)?」「固定するために専用の器具・ツールが必要になるのか(固定する器具)?」を事前に確かめる必要があります。

例えば、最終的な電源工事以外の作業は、汎用部品を利用して、誰でも簡単に(資格者不要)設置できる場合は、低コストでLEDを設置することができます


☆ LEDの設置費用(+電源工事も含む)

  • 設置方法や作業内容によって金額は大きく変動しますが、例えば「500本のLEDを導入した場合、電源工事も含めて、50万円~100万円前後」を請求されることが多い。費用は、LEDを固定する器具や設置作業、電源工事などの全てを含んだ金額になります。
  • LED1本あたりの費用: 1,000円~2,000円 前後


④ LEDの交換スケジュールと交換費用

多くの植物育成用LED商品が、寿命を「5万時間」前後に設定していることが多く、1日16時間の照射サイクルで運営すると「8年」前後でLED本体だけを交換することになります。
また長寿命のため、交換時期には導入時よりもLED価格も安くなっていることが多いです。

結論: 植物工場におけるLEDの導入費用(コスト)

LEDを導入する際の費用(まとめ)
  • 約120cm、20Wの植物育成用、直管・蛍光灯型LEDの場合
  • LED本体: 6,000円~10,000円前後 / 1本あたり
  • ソケット&電源コード: 500円~1,000円前後 / 1本あたり
  • 設置費用(+電源工事含む): 1,000円~2,000円前後 / 1本あたり
  • 交換費用: 8年間でLED本体を交換する必要あり

※ 費用は、あくまで参考情報となります。今回の場合、100本以上の大量発注を実施した場合の一般的な導入コストを想定しております。