植物工場における「光源の種類」と「光量の単位」

お知らせ[2020年4月24日]
商品リニューアルに向けて、2019年製造の「植物育成用LED」在庫分100本を、定価の半額〔4,300円/1本〕にて販売しております。  詳細ページへ

 

植物工場における光源の種類

植物工場の光源には、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、蛍光灯、発光ダイオード(LED)等があります。高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプは、主に『太陽光利用型の植物工場』で利用されることが多く、メインは太陽光(自然光)を活用し、冬場や雨・曇りの際の不足分・補光用として使用されています。

一方、完全閉鎖型の植物工場(完全人工光型)では現在、蛍光灯やLEDが主流となっています。

早くから完全人工光型植物工場の商業施設(1990年代~)が稼働した日本では、その当時の主流である蛍光灯を現在でも採用している施設が多く残っていますが、海外の植物工場では、ほぼ100%の施設がLEDを採用しています

太陽光利用型では、世界の中でも遅れた存在である日本でも、人工光型では歴史が古く、世界のトップリーダーとして活躍していた分だけ、90年代~2010年頃までの施設では、ほぼ全てが蛍光灯を採用しており、2019年時点・全国で約200カ所の施設のうち、40%程度(弊社調べ)が今でも蛍光灯を採用しています

ただし、今でも蛍光灯を利用している施設でも、LEDへの切り替えが行われており、日本でも数年以内には、全ての施設にて、LED光源が標準になることは間違いありません。

 

高圧ナトリウムランプ

長所

  • 寿命が長く、単位出力あたりのコストが安い
  • 管内にナトリウム、水銀、キセノンガスを封入しており、可視光への変換効率が30%と高い

短所

  • 植物に必要な赤色と青色の比率が少ない
  • 大量の熱線を発生させるので、植物との距離が十分に必要

 

メタルハライドランプ

長所

  • 水銀とメタルハライドによる発光を利用したもので、可視光全体をカバーしている
  • 封入する金属ハロゲン化合物(イリジウム、タリウム、ナトリウム)の比率により色温度を調整することができるため、高圧Naランプ等と比較して、演色性に優れている
  • 例えば、大学などの研究機関で導入されている「グロースキャビネット(植物育成用の環境制御装置)」などで採用されていることもある

短所

  • 高圧ナトリウムランプに比べて、発光効率と寿命が、かなり落ちてしまう
  • 他の光源に比べて高価である

植物工場における「光源の種類」と「光量の単位」

完全人工光型でも「果菜類」「穀物」には採用
高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプは、強い光量を確保できる一方で、高温の熱が発生するために、植物と照明を近い位置にして栽培する近接照射が難しい。

こうした光源は植物と照明の距離が、少なくとも1メートル以上離れて照射する必要があるため、多段式栽培が難しく、主に太陽光利用型の植物工場にて採用されている

しかし、完全人工光型植物工場でも、多段式ではなく、強い光量を必要とする果菜類・穀物類を栽培する場合には、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプが採用されている。現時点では、あくまで研究・実証施設として運営されており、商業施設は稼働していないが(イチゴ栽培施設を除く)、遺伝子組み換え作物や医薬品・化粧品の原材料を想定した研究施設では、近い将来に大きなビジネスチャンスがあると考えられている。

 

※ 上記の写真は岩崎電気ホームページより引用。右は東京都にある「パソナ アーバンファーム 都市型植物工場」の様子。水田を完全人工光型で栽培しており、オレンジ色に近い高圧ナトリウムランプと、白色に近いメタルハライドランプを混合した形で栽培している。

蛍光灯

長所

  • 蛍光体の種類によって白色、昼白色、3波長などの様々な分光照射のスペクトルを得ることができる
  • 可視光をカバーしていて、安価で取り扱いやすい

短所

  • 可視光の発光効率が20%と低く、植物栽培に必要な赤色が少ない傾向がある
  • 蛍光灯の中心と両端では光強度が異なる

植物工場における「光源の種類」と「光量の単位」

蛍光灯は製造中止、入手しにくい状況に
広く流通している一般の家庭用・蛍光灯では、葉野菜であっても失敗する場合が多い。たとえ生長しても、収穫までに大きな時間がかかってしまう。

植物工場で利用されている蛍光灯は、植物の光合成にとって最適な波長域が含まれるように調整されており、「NECのビオルックス」や「東芝ライテックのプラントルクス」といった商品が代表的である。2020年現在、多くの照明メーカーが蛍光灯の製造を終了しており、今後はますます入手が難しくなることは間違いないだろう

例えば、2018年に建設した中規模施設(完全人工光型、リーフレタス 3,000株/day)では当初、植物育成用の蛍光灯を予定していたが、使用本数が確保できず、仕方なくLEDに切り替えた、といった実例も発生している。

※ 上記の写真は、東芝ライテック社によるパンフレットより引用。植物育成用の蛍光ランプ「プラントルクス」商品より

発光ダイオード(LED)

長所

  • 赤、青、緑などの単色光を出すことができ、小型で寿命が長い
  • 発光に熱をあまり伴わないので、植物への近接照射・多段式が可能。空調コスト減にもつながる
  • 光合成に有利なパルス照射(間欠照射)が可能

短所

  • 蛍光灯に比べて現時点では高価である(コストの問題)
  • 湿度に弱く、高温になると光出力が低下するので、湿気と冷却対策が必要な場合がある

 

植物工場の光強度は「光合成有効光子束密度PPFD」

19世紀後半から研究が始まったランプは、植物ではなく人が利用するために開発・製造が行われてきました。よって、光の単位は人間の眼に合わせて設定されています。

人の目に最も感度が良い波長は555 nm(緑色)です。人間は緑色の光を一番敏感に感じ取ることができます。同じ強さの光で、どの色(波長)が人間の眼には、一番明るく感じるか、といった指標が「視感度」となります。

一方、植物の光合成にて機能するクロロフィルは、光の粒子を単位として吸収と放出を行うので光量子(Photon)を単位として表します。

植物工場における光源設計について

(森竜雄 著『有機ELの本』日刊工業新聞社, 2008年4月26日初版1刷発行より)

植物工場における光源設計について

植物工場における光源設計について大作商事株式会社のウェブサイトより

光源は「ルクス・ルーメン」ではなく「PPFD」で比較

光合成は電子の働きによります。この電子を励起(れいき)させるのは光量子(電子の粒)なので、光量子のエネルギー単位で、光強度を表示してあげないと、光合成に対する光の効果を正しく評価することはできません。

植物に対する光量(エネルギー)や光強度の単位は、それぞれ光量子束(μmol/s)と光量子束密度(μmol/s-2/s)を基本としており、光合成に必要な光強度(400〜700 nmの可視領域)のことを光合成有効光子束密度(photosynthetic photon flux density, PPFD)と呼び、光の単位時間、単位面積当たりの光量子数を表します。

 

つまり、我々が普段使用している「ルクス」「ルーメン」といった単位では、植物の光合成速度は正確に測れない、ということになります。例えば、それぞれ波長域が異なる照明があり、同じ照度(同じクルス)であっても、PPFDが異なり、植物の生育に差が出る場合もあります。

一方で、人間の目には暗く感じる赤・青の特定波長のLEDと、その5倍以上の照度(ルクス)を持つ、蛍光灯であっても、同じPPFDとなり、植物の生育という点では同じスピードという結果が出る場合もあります。

現在では、光合成有効光子束密度(PPFD)を測定できる小型・低価格帯の計測器も市販されておりますので、植物工場にて光源を選定する際には、必ずPPFDで光強度を比較することをお勧めします。

  • 参考: 昭和電工ホームページ「第2回 光はどうやって測ればいいの?」 https://www.sdk.co.jp/products/49/13496/13495/14861/15875.html

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