世界の水耕栽培プラント、その市場規模は?

1年間における養液設備、世界の売上総額は約260億円

養液栽培の設備プラント市場について、2016年の1年間における世界の売上総額が、2億3181万ドル(約260億円)と推計されています。養液栽培は飛躍的に拡大しており、年平均成長率は10%を超えています。

また、2025年には5億6450万ドル(約633億円)に拡大すると予想されており、今後、注目されているビジネス・テーマの一つです。(*1)

養液栽培といっても、固形培地を利用したものや、完全水耕(*2)など、様々な栽培手法があり、トマトやイチゴ、パプリカやキュウリのほか、レタスや葉野菜なども養液栽培で生産されることが増えています。
その他、肥沃な土壌がない都市部では、狭い面積でも高い生産性を実現できる植物工場が市場拡大に貢献しています。

一般的な生鮮野菜のほか、今後はメディカル植物、機能性野菜、環境配慮型の生産方式(水や肥料の節約、CO2排出量の削減など)が市場拡大の起爆剤として期待されています。

世界の植物工場・水耕栽培における市場規模は?

(*1) Coherent Market Insights社の調査による。市場規模は、養液栽培に限定した設備プラント、LED照明、灌漑設備、環境制御システム、農業ICT、空調設備などが含まれた「設備プラント市場」の推計。

(*2) 養液栽培では土やココピート、ロックウールなどの培地を使用して生産する方式、NFTやDFTといった養液の深さを変えて、培地を使用せずに養液だけで生産する水耕栽培がある。厳密には、水耕栽培は養液栽培の中の一つにすぎないが、多くの場合は養液栽培≒水耕栽培として扱われることも多い。以下では水耕栽培と記載して説明。

※ 図は日本養液栽培研究会より引用。細かい用語の説明などは同協会のウェブサイトをご参照ください。URL: http://www.w-works.jp/youeki/index.html

 

照明と空調の売上構成が大きい。普及率は欧州トップ

水耕栽培(養液栽培)にて、最も大きな市場があるのは、LEDなどの植物育成用ランプとなります。その次に、空調関連技術です。

ここには、暖房や冷房、換気といった分野が全て含まれています。空調関連技術は、環境制御型農業(CEA,Controlled-environment agriculture)では必須の技術となります。

 

水耕栽培の普及率は欧州がトップ

2016年において、水耕市場における売上額でいうと、欧州が世界全体の36%を占めており、トップとなっています。国土の狭い国が多い欧州では、IoTや環境制御技術を導入したスマート農業を展開する生産者の割合が多く、生産者のIoT化・ハイテク化の導入率が高いことが分かります。

例えば、オランダのほかにも、フィンランドやデンマークといった北欧エリア、近年ではスペインやフランスの地中海エリアでも水耕設備が増えており、その多くが、太陽光利用型植物工場に分類される大型ハイテク施設となっています。

2015年には、オランダを拠点とするフィリップ社が完全人工光型植物工場のプラント開発・販売を本格的にスタートしており、すでに同社では、自社の研究施設のほかにも世界各地に設備プラントを納品しています。

オランダは太陽光利用型植物工場では世界NO1.の施設面積を誇り、約8,000~8,500ha前後もあると推計されていますが、近年では人工光型の施設稼働事例も、徐々に増えてきています。

世界の植物工場・水耕栽培における市場規模は?

フィリップ社の自社研究施設[Philips GrowWise Center]。同社ウェブサイトより

 

北アメリカの水耕・植物工場市場も急速に拡大

次に水耕市場として大きなエリアはアジア地域です。こちらは、欧州の植物工場とは異なり、簡易的な水耕栽培が普及の中心となっております。そして、3番目のエリアが北アメリカ地域となります。

北アメリカ地域は、急速に市場が拡大しているエリアで、無農薬や地産地消といった環境・健康を意識する消費者が増えているため、水耕栽培を選択するケースが多いからです。

また、広大な土地の中でも、砂漠化や高温地域、寒冷地域など農業に適さないエリアも多いのが米国であり、水耕栽培や植物工場といった環境制御型農業(CEA)を活用して地産地消を拡大することに、政府(自治体)や民間企業、消費者が一体となって努力しています。

ただし、米国内では植物工場のようなハイテク大型施設の割合は低く、大規模な露地栽培がメインです。高品質な生鮮野菜は現在、カナダやメキシコにある太陽光利用型植物工場にて生産したものを輸入していますが、米国の北側(シカゴ)・東側(ニューヨーク)の都市部では植物工場技術などを活用して、徐々に国内生産にシフトしていく傾向が高まっています。


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