養液栽培・植物工場の普及率&市場シェアは?
今回の調査レポートでは「施設園芸」「養液・水耕栽培」「太陽光利用型の植物工場」の3項目について、国内における市場動向を調査し、データを整理しました。
具体的には、上記3項目について、栽培面積推移・普及率やシェアを調査するとともに、市場規模が大きな2品目【イチゴ】【トマト】は、各品目ごとの面積推移、普及率などをデータ化し、グラフとして作成しております。

なお、今回は「野菜」「花卉」「果樹」の3項目のうち「野菜」だけに特化して調査しました。施設園芸の中でも、野菜の栽培面積が全体の70%以上を占めており、トマト(ミニトマト)、イチゴ、メロンといった高単価、かつ、市場規模が大きな農作物も全て「野菜」に含まれているからです。よって、野菜以外の「花卉」「果樹」は調査対象外となります。
調査に関する要約
● 野菜のみを対象とした施設園芸面積(ガラス室・ハウス)は、H11年の「 37,484 ha 」をピークに急激に減少。近年は下げ止まっているが、今後の施設園芸面積も徐々に減少していくと予測(ただし、減少幅は小さい)。
● 施設栽培が可能な農作物の中で、市場規模(産出額, H30)が大きな野菜は、トマト(2,367億円)、いちご(1,774億円)、きゅうり(1,485億円)、ねぎ(1,466億円)、なす(907億円)、ほうれんそう(878億円)などが挙げられる。
● 施設園芸シェア(施設園芸が普及している野菜)
トマト、イチゴの2品目は「85~90%」。市場にて流通しているトマトやイチゴの85%以上は「施設園芸」にて生産されている。対象17品目の中で、最も施設園芸シェアが低いものが「レタス類」(2.5%)となる。
施設園芸面積は20年間で18%も減少
野菜のみを対象とした施設園芸面積(ガラス室・ハウス)は、H11年の「 37,484 ha 」をピークに急激に減少していますが、民間企業(法人企業)による大規模施設が拡大しており、近年は下げ止まっている状況です。
しかしながら、農家数の減少・高齢化による後継者問題などの影響が大きく、今後の施設園芸面積も徐々に減少していくと、予測しています(ただし、減少幅は小さい)。
農業就業人口・基幹的農業従事者
例えば、農業就業人口は、H12年「約389万人」⇒ H31年「約168万人」 約20年間で57%も減少しています。また、兼業を含まない自営農業を行っている農家数である「基幹的農業従事者」も、H12年「約123万人」⇒ H31「約98万人」 約20年間で20%が減少しています。
このようにみると、個人や家族経営である小規模な兼業農家が、大きく減少していることが分かります。
施設園芸における品目分析
そもそも、施設園芸や植物工場(太陽光利用型)にて、どういった野菜を栽培すべきなのでしょうか。今回は ① 市場規模が大きな野菜、② 施設園芸が普及している野菜、の2つの指標をもとに分析しました。
① 市場規模が大きな野菜
市場規模として「産出額(H30年)」を参考に、農産物トップ20位の中で、施設園芸にて栽培している野菜だけをピックアップすると、トマト(2,367億円)、いちご(1,774億円)、きゅうり(1,485億円)、ねぎ(1,466億円)、なす(907億円)、ほうれんそう(878億円) などが代表例となります。
ニッチな作物を狙うのも事業戦略の一つですが、将来的に大きなビジネスに成長させるためには、ある程度の市場規模を持つ作物をターゲットに置くことが必要になってきます。
② 施設園芸シェア(施設園芸が普及している野菜)
もう一つの指標が「施設園芸シェア」です。今回は市場に流通している野菜の中で、どれだけの量が施設園芸で栽培されているのか、その割合を分析しました。
出荷量ベースでみると、トマト、イチゴの2品目は 85~90% を施設園芸が占めており、市場で流通しているトマトやイチゴの 85% 以上は「施設園芸」にて生産されているものだと分かります。その他、施設園芸シェアが高い品目として、キュウリやピーマン、アスパラガスなどが挙げられ、60~70% 前後を占めています。
なお、今回の調査レポートでは、以下の17品目について、その市場規模(産出額)や施設園芸シェアを整理しております。
- トマト類(うち、ミニトマト)、イチゴ、きゅうり、レタス、ねぎ、にら、なす、ホウレン草、メロン、すいか、ピーマン、アスパラガス、さやいんげん、さやえんどう、しゅんぎく、セロリ(セルリー) の17品目
対象とする17品目の中で、最も施設園芸シェアが低いものが「レタス類」(2.5%)となります。完全人工光型植物工場にて大量に生産されているイメージがあるレタス類(リーフレタスも含む)ですが、市場流通量の97.5%が露地栽培、または簡易的なフィルム栽培(トンネル栽培、雨よけ栽培)にて生産されているものだと分かります。
このようにマクロ視点で見た場合、露地栽培(*)が独占している「レタス類」ですが、施設園芸や植物工場(人工光型も含む)にて栽培するレタス市場の成長率は高いものがあります。
例えば、ここ25年間における栽培面積の増減率を調べると、ほぼ全ての野菜が減少している中で、レタス類だけが施設園芸面積を「143%」増加していることが分かります。
(*) 流通量の80~85%以上を占める玉レタス(結球レタス)の大部分は「露地栽培」にて生産されている。